
中学の国語の授業で枕詞を習った。
和歌には枕詞があって、特別の言葉につく言い回しだ。
「たらちねの」とか「ひさかたの」などを習った。
教師は、枕詞には意味はないと言った。
教科書にも参考書にも、そう書いてあった。
そのときはそういうものかなと理解したけれど、大人になってから本当かなと思った。
たった三十一文字しかないのに、そのうち5文字も意味のない言葉で埋めるのだろうか。
もちろんそんなことはないと直感的に感じていた。
だから、古代の人たちは、枕詞に込められた意味を何となく感じ取っていたんだけど、当時の人たちも、もう本来の意味は分からなくなって、言葉の決まりみたいに使っていたんだろうと漠然と思っていた。
でもそういうことでもないだろうと、感じていた。
きょう、枕詞の謎が少し解けた。
平安時代より前の人たちは、言葉には表の意味と奥の意味があって、奥の意味も使いこなしていたことを知った。
表と裏ではない。表と奥である。
奥とは、表の意味に隠された、本当に伝えたい奥の暗号のようなものである。
古事記を編纂した太安万侶は、これを言(こと)と意(こころ、心)と言った。
ことばの表面の意味は言(こと)である。
本当に伝えたいのは奥の暗号、意(こころ)であるという。
平安時代になると、これを枕といった。
枕とは真暗(まくら)である。
枕には、暗号が隠されていた。
本当に伝えたいのは、奥の暗号であった。
和歌の枕詞は意味がないのではなくて、表の意味に隠された暗号が潜んでいた。
それを平安の人たちも理解していた。
地名を意味する歌枕というものがある。
歌「枕」である。これも、地名だけではなくて、地名に隠された暗号が潜んでいて、平安の人たちはその暗号を知っていたのだ。