皆様こんにちは
蓬田でございます!
今日も「愛国の歌」を、皆様とご一緒に鑑賞してまいりましょう!
今日の「愛国の歌」はこちらです。
一方(ひとかた)に 靡(なび)きそろひて 花すゝき
風(かぜ)吹(ふ)く時(とき)ぞ みだれざりける
香川景樹(かがわかげき)
歌の意味は
普段は一本一本勝手に乱れているすすき
でも一旦風が吹くと一方に靡き揃って乱れることはない
普段は思い思いの考えで、思い思いの行動をしていても、一旦、事があるときに臨んでは、心をひとつにしてあたるのが人の心であり、日本の精神だということを詠っていると思います。
風景を詠みながら、自分の心情、主張を表現しています。
こうした手法は、和歌本来の手法です。
この歌は平易な表現で、和歌本来の精神を宿している、個人的にはとても好感の持てる和歌です。
言葉の意味を、みておきましょう。
「一方(ひとかた)に」は、「一方(いっぽう)に」の意味。
「花ススキ」は、穂が出揃ったススキのことです。
作者の香川秀樹は因幡(鳥取)の人で、江戸後期に生きました。(記事の冒頭にあるのは香川景樹の肖像画)
幼い頃から聡明で「奇童」と呼ばれました。奇童とは神童のことです。
十八歳のとき京都に出て公家に仕え、そのつながりから、子のいなかった歌人、香川景柄の養子となりました。
天保十四年(1843年)に亡くなります。享年七十六。
明治四十五年、正五位を贈られています。
歌風は、この「愛国の和歌」でも紹介しました小澤蘆庵(をざはろあん)の影響を強く受けています。
そのとき、ご紹介した蘆庵の歌です。
あし原(はら)や この國(くに)ぶりの 言(こと)の葉(は)に
栄(さか)ゆる 御代(みよ)の 声(こゑ)ぞ聞(きこ)ゆる
歌の意味は、
我が日本の国風(こくふう)である和歌こそ
弥栄(いやさか)えに栄える大君の声が聞こえる
景樹は蘆庵に学ぶことを通じて「調(しらべ)の説」という独自の歌論を提唱します。
これは、古今和歌集の歌風を尊重した歌論です。
しかし、保守派からは強い反撃を受けました。
景樹は「桂園(けいえん)派」と呼ばれる和歌の流派の祖でもあります。
ちなみに、小説家下田景樹のペンネームは香川景樹から付けられたものです。
今日の一首が、皆様の心に感じるところがありましたら幸いです!