東に向いている窓から一直線に差し込むオレンジ色の陽が、ダイニングテーブルの上で原稿を書いている俺の手の甲をじわりと温める。
陽はじわじわとしていが、急に力強く熱さを増した。
手元が眩しくなって目をそらし、すぐ横に垂直に立っているベージュ色の壁紙を見る。
陽が当たっている壁面部分は白飛びし、当っていない壁面部分はもとのベージュ色。
ふたつの世界をくっきりと形作っている。
テーブルの上には、昨晩の夕食でデザートで食べた巨峰が5粒、小さなガラス皿に載っている。
小さいのを選んで、一粒、皮ごと口の中へ放り込む。
口を動かすと、皮と身とのあいだにあるゼリー状のような甘美なエキスが、口中に広がる。
きょうはじめてとなる味覚を味わう。