2026/1/25
蓬田修一
韓国政治を見ていると、保守政権と進歩政権との政策の違いが分かりにくい印象を持つのはわたしだけはないだろう。
わたしの研究によれば、保守派と進歩派との違いは、「国家の正当性と歴史をどう見るか」である。この点について、台湾や日本との比較をしながら、以下に少し書いておきたい。
まず、台湾と日本の状況を簡単に整理してみましょう。台湾の国民党と民進党の対立は比較的分かりやすい。すなわち、「中国との関係をどう位置づけるか」「台湾をどのような国家にしていくのか」という、国家の帰属や将来像をめぐる対立です。
日本の場合も、保守とリベラルの対立は、防衛力の考え方、移民政策、伝統や文化をどう守るかといった、主として「これからの社会をどう設計するか」という未来志向の違いとして現れる。
これに対して、韓国の保守派と進歩派の対立は、未来よりもむしろ過去の捉え方に深く根ざしている。両派の最大の違いは、「大韓民国という国家をどう正当化するか」という点にある。
韓国の保守勢力は、1948年に成立した大韓民国を正統な国家として肯定し、その存続と発展を最優先に考えてきた。朴正熙政権に代表される権威主義体制についても、「冷戦下という厳しい国際環境の中で、国家を守り経済成長を実現するためにやむを得なかった側面がある」と、一定の評価を下す。
対外関係では、米韓同盟を軸に、現実的な外交と安全保障を重視し、日本との関係についても「問題はあるが、管理すべき外交課題」として扱う姿勢が比較的強い。
一方、進歩(革新)勢力は、国家そのものを問い直す。彼らにとって大韓民国は、親日勢力、冷戦構造、軍事独裁の中で「歪んだ形で成立した未完の国家」だ。
そのため、民主化運動こそが国家の真の正統性の源泉であり、過去の不正義は徹底して清算されなければならない、という考え方が強くなる。
日本統治時代の問題が現在に至るまで繰り返し強調されるのも、日本が「清算されていない過去」を象徴する存在と見なされているからだ。
では、両派の政策の違いは何なのか? わたしは基本的に両派に違いはないと捉えている。その理由は、韓国が置かれている現実にある。北朝鮮という恒常的な脅威、米韓同盟への依存、グローバル経済への組み込みといった条件は、保守であれ進歩であれ大きく変えることができない。そのため、安全保障や経済運営といった実務面では、政権が変わっても大きな違いが出にくい。
結果として、違いが最も鮮明に表れるのが、歴史認識や過去の清算、そして日本への態度といった「象徴的な政治」の領域になる。
わたしは韓国政治における対日姿勢は、「強硬」か「さらに強硬」かのどちらかだと捉えている。保守派は「強硬」、進歩派は「さらに強硬」だ。
ただ、保守派が強硬な発言をすることがあるが、その目的は多くの場合、国内世論への配慮や政治的均衡にある。
一方、進歩派の場合は、日本との歴史問題が道徳や正義の問題として再定義され、対日関係が緊張しやすくなる。
まとめると、韓国の保守派と進歩派の違いは、日本や台湾のように将来の国のあり方をめぐる対立ではなく、国家の正当性と過去をどう評価するかという点にあるのだ。そして、日本はその歴史的対立の対象に置かれているのである。