2025/12/27
M&C・蓬田修一

近年、中国共産党政権は、国際社会の常識から見ると首をかしげざるを得ない歴史認識や外交発言を、ためらいなく公式に発信している。サンフランシスコ講和条約の正当性を否定する発言や、国際法秩序を自国に都合よく再解釈する主張は、その代表例である。こうした姿勢を単に「虚偽」「強弁」「プロパガンダ」と切り捨てることは容易だが、それでは本質的な理解には至らない。重要なのは、中国共産党がどのような組織原理と世界観に基づいて行動しているのかを構造的に捉えることである。

第一のポイントは、中国共産党が通常の「統治政党」ではなく、今なお自らを革命政党と位置づけている点である。中国共産党の思想的源流はレーニン主義にあり、そこでは「客観的事実」や「中立的真理」よりも、「革命の正しさ」「歴史の必然性」が優先される。

共産党は、自らが歴史の進歩方向を体現する存在であり、その目的に資するなら、事実の取捨選択や再解釈は正当化されうる、という発想を内包している。したがって、外部から見て「歪曲」に映る発信も、彼ら自身の論理の中では「政治的に正しい主張」なのである。

第二に、中国共産党の情報発信は、主として国外向けではなく国内向けであるという点が重要である。

国際社会を説得することよりも、国内の統治正当性を維持・強化することが最優先される。中国は長年にわたり、愛国主義教育とナショナリズムを通じて、「中国は外部から不当に抑圧されてきた」という歴史観を国民に浸透させてきた。その枠組みの中では、国際社会との摩擦は「中国の正当な主張が理解されていない結果」として説明される。強硬な発信は、国民に対して「党と国家が外圧に毅然と立ち向かっている」姿を示す機能を持つ。

第三に、現在の中国政治における権力構造も無視できない。習近平体制の下で権力は高度に集中しており、党内における異論や修正機能は著しく弱まっている。幹部や外交官にとって重要なのは、国際的な評価よりも「党中央、とりわけ最高指導者の意向に沿っているかどうか」である。

その結果、発言は次第に過激化し、整合性や現実性よりも忠誠心の表明としての性格を強めていく。これは個々の発言者の資質というより、組織構造が生み出す必然的な帰結といえる。

第四に、中国共産党には、矛盾や事実の齟齬を正面から調整する文化が乏しいという特徴がある。レーニン主義的伝統においては、論理的整合性よりも政治的効果が重視されるため、矛盾は「別の物語」を提示することで乗り越えられる。

過去の発言との不整合や国際的批判に対しても、訂正や謝罪ではなく、より強い主張で上書きする傾向が見られるのはこのためである。

以上を踏まえると、中国共産党の歪曲的とも見える情報発信は、突発的な逸脱や感情的反応ではなく、革命政党としての思想、国内統治を最優先する論理、権力集中体制、そして独特の政治文化が組み合わさった結果だと理解できる。これは是非善悪の問題というより、異なる政治原理を持つ組織の行動様式の問題である。

私たちが中国共産党の発信に向き合う際に求められるのは、感情的な反発でも同調でもなく、こうした構造を冷静に見極める視点である。