2012/9/9鑑賞
横浜美術館「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」
NARA Yoshitomo
a bit like you and me…
Nowhere Man
The Beatles
Lennon/McCartney
He’s a real nowhere man
Sitting in his nowhere land
Making all his nowhere plans for nobody
Doesn’t have a point of view
knows not where he’s going to
Isn’t he a bit like you and me?
Nowhere man please listen
You don’t know what you’re missing
Nowhere man, The world is at your command



White Ghostは美術館エントランスを入ってすぐ、展覧会場の中央部に堂々とした姿で存在していた。
2025/11/16執筆
White Ghost
私は横浜美術館の狭いエントランスを通って展示会場に入った。
広くて天井の高い空間にWhite Ghostは置かれていた。
「子ども像」から「精神的彫刻」へ
奈良美智は絵画の作家として知られていたが、「White Ghost」以降、彼は「イメージの彫刻化」に成功した作家と評価されるようになる。
多くの現代アーティストが平面と立体を行き来するものの、多くの場合、絵のキャラクターを立体化にしたことに留まりがちだ。
しかし「White Ghost」は、キャラクターの立体化ではなく、精神のかたちの彫刻化として成功した。
顔の造形は、沈黙・祈り・覚醒前・怒りのような感情を彫刻として成立させている。
物質に魂を与える
作品の素材であるFRP(繊維強化プラスチック)は、本来無機質な素材だ。ところが「White Ghost」の印象は、柔らかさ、皮膚のような質感、子どもの体温を感じる表面、近づくと生々しい存在感を持っている。
素材に魂の呼吸が与えてられているようにみえる。彫刻史の文脈では、素材本来の性質を超えた意味を与えることは、高い評価の対象になる。
造形作品をキャラクターフィギュアの延長にしなかった。
「祈りの像」の普遍性
「White Ghost」は宗教彫刻にも似た“祈りの像”として評価されている。
静かに立つ立像の形式、霊性を思わせる色調、子どもでありながら仏像にも通じる姿勢、これらが特定の文化を超える祈りの造形として読める。
奈良は宗教美術を直接引用せず、祈りの形として国際的に通じる造形を実現させた。
「孤独の肯定」としての現代性
奈良美智の作品は「孤独」「反抗」がよく語られるが、「White Ghost」の場合は、攻撃性ではなく、孤独を抱えながらも静かに立ち、世界と距離を取りつつ存在しているようにみえる。
無害そうでありながら強さも感じる。こうした“孤独の肯定”が造形化されている。
現代アートの国際的テーマとして、「孤独をどう肯定するか」は非常に大きな潮流だ。
「White Ghost」は、傷つきやすい個人=Ghost(幽霊=誰にも見えない存在)を肯定する像として読めるため、現代性が強い。
「空間」と「光」を取り込む力
大きな立像であることから、「White Ghost」は設置空間と光を取り込んで完成する。
天井の高い展示室では、像が「祈りの塔」のような雰囲気を漂わせる。見る角度で顔の表情が変わり、周囲の静けさが像が秘める内面性を強調する。
彫刻は置けばよいわけではなく、空間と共鳴して初めて彫刻作品となるのだ。