多くの国々では、宗教といえば神や教祖、経典、教団といった制度を思い浮かべるかもしれません。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のような一神教では、自然は神が創造したものとして位置づけられ、自然そのものを神として祀ることはあまりありません。
しかし、日本の信仰のあり方は少し異なります。日本人は古代から、山や川、岩や木など、自然そのものを神(カミ)として祀ってきました。
これは「神道」と呼ばれますが、厳密には宗教というより「信仰のかたち」といった方がふさわしいでしょう。
この自然崇拝の伝統は、今でも日本人の生活の中に息づいています。
たとえば初詣で神社に行くこと、お祭りで山や海の恵みに感謝すること、大きな木や美しい滝の前で自然に手を合わせること。
日本人はそれを「宗教的行為」とはあまり意識していませんが、心の奥底では自然に対する畏敬と感謝が根強く残っています。
世界の多くの地域でも、古代には自然崇拝が行われていました。しかし、文明の発展とともに宗教は体系化され、唯一の神を中心とする思想が広まり、自然崇拝は次第に姿を消していきました。
その中で、日本は珍しく、自然を神聖視する感覚を純粋な形で現代まで残している国なのです。
つまり、日本人にとって自然は単なる「環境」ではなく、「共に生きる存在」であり、「畏れと感謝の対象」でもあります。この自然観は、宗教というより、生き方や心の習慣に近いものです。
日本人は自然を神と感じる心を、今も生活の中に持っています。それは宗教というより、生きる上での自然な感情なのです。