(令和五年(2023)九月十一日)
呉の賢王子 延陵の季子
たとえ相手が亡くなろうとも
交わした約束 違わず果たす
わたしは不意に季子の故事が思い浮かんだ
わたしが季子のような振る舞いをするのは間違いだろうか
亡き友人の墓に剣を掛けることはないかもしれない
恥ずかしい限りだ
秋風は芭蕉が今わの際に見た夢をすっかり打ち破った
冷たい雨は不幸な放浪者のうたをつくりだす
この日本のあり様はどうしたことであろう
筆を投げ捨て立ち上がるのだ
人の世には人としての道がある
余人に先駆けその道に歩を進めるのだ
命を捨てるときと、命を捨てるところ
それを知りえたのなら、どうして命を差し出さないことがあろうか
一日は二十四時間
人と時間は切り離すことができないのだから