
2025/11/17
【質問】
いまの中国の指導者は習近平です。タイミング的に、次の指導者について言及していもいい時期ですが、習近平は時期指導者についてこれまで言及していないと思います。
習近平は次の任期も最高指導者としてあり続けようと思っているのかしれません。
中国の若者は習近平にどのような印象を抱いているのでしょうか。
私は習近平は反腐敗キャンペーンを行ったりして、庶民の味方の側面を強調しているように思います。毛沢東と通じる面を感じます。
中国の若者は政治には触れないようですが、誰が最高指導者になるかについても、民主的な方法で政治にかかわることができない以上、関心をあえて持たないようしているのでしょうか。
【回答】
「習近平を若者がどう見ているか」 と 「次の指導者への関心がなぜ薄いのか」 は、中国社会の価値観・政治文化・世代心理がすべて重なっています。
以下、整理してお答えします。
■1. 前提:中国の若者は「政治に無関心」なのではなく、「政治に関心を持たない方が安全」と学んでいる
中国では子どもの頃から、
- 政治に触れない
- 政治について人前で議論しない
- SNSでも政治を語らない
という“無意識のリスク回避”が形成されています。
これは
「触れない」ことが最も理性的で賢い行動
とされる社会構造の結果であり、若者はこの空気を自然に身につけています。
■2. 中国の若者は習近平をどう見ているのか
中国の若者の習近平イメージは、3つのタイプに分かれます。
◆タイプ①:政治的無関心層(もっとも多数)
全体の7〜8割ほどはこの層です。
特徴:
- 習近平を「国のトップ」としか見ていない
- 評価しようという意識がそもそも薄い
- SNSの発言は控え、話題にしない
- 「経済が安定してくれれば誰でもよい」という感覚
この層にとっては、
習近平の印象<自分の就職・収入・生活の不安
です。
◆タイプ②:肯定的にとらえる層(特に地方や保守的家庭の若者)
この層が支持する理由は明確で、
- 反腐敗キャンペーンを評価
- “強い国家”路線が安心につながる
- 外交で「中国が尊重されている」と感じる
- 安定を重視する価値観(混乱より秩序)
ここには、
「毛沢東的なカリスマへの期待」
がうっすら存在する場合もあります。
特に農村出身の若者(大学で都市へ出てきた層)は、
習近平=秩序の象徴
というイメージを持つことが多いです。
◆タイプ③:不満はあるが、声に出さない層(大学生・大都市に多い)
この層は政治的に敏感で、現実を冷静に見ています。
- 経済悪化
- 就職難
- 社会流動性の停滞
- 表現の制限
などに不満を抱えますが、それを表に出すことはありません。
日本の人から見ると「政治的無関心」に見えますが、
実際は
「言っても変わらないし、リスクがある」
という合理的判断です。
■3. 「習近平は毛沢東に近いのか?」
これは非常に多くの中国研究者も指摘していますが…
●毛沢東の特徴
- 革命的・破壊的
- 絶対的カリスマ
- 群衆を巻き込む
- 理論的には急進左派
●習近平の特徴
- 革命のカリスマ性より、官僚的統治
- 秩序・安定を最優先
- 「腐敗=党の脅威」を排除する整理整頓型
- 社会管理を強化し“統治の効率化”を図る
- 国民動員はするが、毛沢東ほど“動乱”を好まない
つまり、
毛沢東=火(革命)
習近平=土(安定)
という比喩がよく使われます。
ただし若者にはそこまで歴史比較の意識はなく、
「強いリーダー」「安定を重視」「反腐敗」がイメージの中心
です。
■4. 若者が次の指導者に関心を持たない理由
これは中国社会独特の事情です。
◆理由①:選べないものに関心を持っても意味がない
日本では、次の総理が誰になるかが自分の生活に影響するため、自然に関心が生まれます。
しかし中国では、
最高指導者の選出は完全に党内の密室政治
であり、一般国民が影響を与える余地はゼロです。
そのため若者は、
「知らなくてよい」「考えるだけムダ」
という合理的態度になります。
◆理由②:政治話は危険という学習
政治を論じると…
- SNSアカウント停止
- 大学でマークされる
- 就職に不利
などの“見えないリスク”があります。
リスクのある話題は若者同士で避ける文化があります。
◆理由③:最大の関心は「自分の人生」で、政治は遠い
中国の20〜30代が最も気にしているのは、
- 就職
- 収入
- 結婚・住宅(特に住宅価格)
- 都市戸籍の取得(戸籍制度による格差)
であり、政治が生活を変えるという発想が薄いため、
最高指導者への関心も必然的に低くなります。
■5. 結論
中国の若者にとって、習近平は…
- 「政治の顔」ではあるが、生活への直接の影響は感じにくい
- 反腐敗で評価する者もいる
- カリスマというより“秩序を守る権力者”
- 積極的に支持するのでも、反対するのでもない
- “政治を語らない方が賢い”という共通感覚がある
- 次の指導者にも“関心を持つ必要がない”と考える
- 民主的選択ができないため、政治は生活世界の外側にある
という複雑な構造のなかに位置づけられます。