2018/6/18 国立近代美術館で鑑賞。

Gordon Matta-Clark 
Graffiti Photoglyphs, Graffiti Track

作品は1973年に制作。この年はニューヨークにおいてグラフィティが最初に盛り上がった時期である。

ゴードン・マッタ=クラークが、ニューヨークの街中の壁や地下鉄の車体に描かれたグラフィティをモノクロ写真に撮り、それをプリントアウトして、そこに着色した作品だ。

Gordon Matta-Clark:
Mutation in Space

何が評価されたのか?

ゴードン・マッタ=クラーク(Gordon Matta-Clark)の作品が評価された点は、建築空間に対する根源的な問いかけと、都市・社会との関係性を芸術の対象とした革新性にある。


  1. 建築の「解体」ではなく「再構築」としてのアート

彼の代表的な手法である「ビルディング・カット(building cuts)」は、廃屋や取り壊し予定の建築物に対して、巨大な切断や穴あけを施す行為である。

これは単なる破壊ではなく、既存の空間を解体し、新たな視覚的・身体的体験を観者に与える装置として再構成する試みであり、建築と彫刻の境界を超える芸術行為として評価された。


  1. 空間と身体性の新たな関係性の提示

マッタ=クラークの作品は、空間を物理的・感覚的に「通過する」「切り裂く」行為を通して、観者の身体を巻き込む体験型アートであった。

これは美術館の内部で完結する従来の彫刻とは一線を画し、都市の現実と人間の身体とを直に接続する空間芸術として注目された。


  1. 社会的・政治的文脈への意識

彼の活動は1970年代のニューヨークを背景に展開された。都市の再開発、貧困、空き家の増加といった問題に対し、アートを通して視覚的・身体的に問題提起する姿勢は、単なる美的創作を超えて、社会的実践としての芸術の可能性を示した。

そのため、アクティビズムや社会派アートの先駆的存在としても高く評価される。


  1. ドキュメント性と時間性の融合

建物のカット作品は一時的なものであり、やがて取り壊されてしまうが、彼はそれらの行為を写真、映像、図面、テキストによって記録・再構成した。

このように「行為」「痕跡」「記録」を一体化させた手法は、後のパフォーマンス・アートやコンセプチュアル・アートにも影響を与えた。


  1. 建築家としての知見と詩的感覚の融合

マッタ=クラークは建築を学びながらも、建築の常識を逸脱する形で空間を詩的・批評的に扱った。

彼の作品には、幾何学的な切断の美しさや光と影の劇的な演出など、空間を素材とした詩的表現が込められており、それが理知性と感性の両立として評価されたのである。


総じて、マッタ=クラークは美術と建築、アートと社会の境界を撹乱し、空間・身体・社会を統合的に扱う新たな芸術の地平を切り拓いた点で、現代美術に多大な影響を与えたアーティストである。