2026/1/1
蓬田修一
1.「反日教育」という言葉の性格の違い
まず最初に確認すべきなのは、中国と韓国では「反日教育」の性格が根本的に異なるという点です。
中国共産党の場合、反日教育は
- 共産党の歴史的正当性を支える
- 国民統合を図る統治装置
- 国内矛盾を外部に転嫁する政治技術
という体制維持の中核的政策です。
一方、韓国の場合、反日教育は体制の正当性そのものを直接支える装置ではありません。より正確に言えば、韓国の反日教育は、
- 植民地支配の経験を国家アイデンティティに組み込む試み
- 分断国家としての「被害と抵抗の物語」
- 国内政治における動員・正統性競争の資源
として位置づけられてきました。
つまり、中国が「党の統治のため」に反日教育を行うのに対し、韓国は「国家と社会の物語」を構築する過程で反日教育を重視してきた、という違いがあります。
2.韓国の学校教育における反日教育の実際
(1)近代史教育の中心に置かれる「日本統治期」
韓国の学校教育では、日本統治期(1910〜1945年)が近代史教育の中心的テーマとして扱われます。特徴的なのは、
- 日本統治=一貫した抑圧と収奪
- 朝鮮人は基本的に被害者
- 抵抗運動は民族的正義
という構図が、かなり単純化された形で反復される点です。
日本が朝鮮において行った産業化、教育制度といった側面は、「収奪のための制度」「支配を円滑にするための装置」として説明されることが多く、評価の幅は極めて限定的です。ここが台湾とは大きく違う点です。
(2)感情的記憶を伴う教材・表現
韓国の歴史教科書や副教材では、
- 強制動員
- 慰安婦問題
- 独立運動家の殉難
などが、感情移入を強く促す形で提示されます。これは「事実を知る」教育というよりも、「どう感じるべきか」を同時に教える教育と言えます。
この点は中国の反日教育とも共通していますが、韓国の場合は共産党の指導というより、市民社会・教育界の合意によって支えられてきた点が異なります。
3.学校外教育と社会環境による補強
(1)記念館・博物館・記念日
韓国では、独立運動家の記念館、慰安婦関連施設、日本統治期を扱う博物館が数多く存在します。これらは学校教育と連動し、
- 「日本=加害者」
- 「韓国=被害者であり抵抗者」
という枠組みを、社会的常識として補強します。
(2)メディアと市民運動の影響
韓国では、反日をテーマとする市民団体やメディアの発信力が強く、
- 歴史問題が現在の政治・外交と直結
- 日本への批判が道徳的正義として語られる
傾向があります。
この点も中国と似ていますが、中国が国家主導なのに対し、韓国では市民社会と政治が相互に影響し合う形で反日言説が維持されています。
4.韓国はなぜ反日教育を重視してきたのか
(1)分断国家としての自己正当化
韓国は建国以来、北朝鮮との対立という深刻な問題を抱えてきました。その中で、
- 「外からの抑圧に耐えた民族」
- 「自由を守るために闘った国家」
という物語は、国家の正当性を支える重要な要素でした。
日本統治期の被害の強調は、その物語を補強する役割を果たしてきました。
(2)国内政治における動員資源
韓国では、政権交代のたびに歴史問題が再燃する傾向があります。反日は、
- 保守・進歩を問わず使いやすい政治テーマ
- 国民感情を短期間で動員できる装置
として機能してきました。
ここが、中国共産党との大きな違いです。中国では反日教育は「常設の統治装置」ですが、韓国の反日教育は「政治状況に応じて強弱が変わる動員資源」です。
5.中国との本質的違い
整理すると、両者の違いは次のようになります。
- 中国:
反日教育=共産党統治の根幹。否定すれば体制が揺らぐ。 - 韓国:
反日教育=国家物語と政治文化の一部。政権や社会状況によって強弱の変化がある。
韓国では、世代が下がるにつれて反日感情が相対的に薄れる傾向も見られます。経済交流や文化接触が増えることで、教育で刷り込まれた認識と現実との間にズレが生じているためです。
6.対応のための視点
韓国と中国の反日教育を考えるとき重要なのは、
- 中国の反日教育は「体制維持のための装置」である
- 韓国の反日教育は「国家と社会の物語の形成過程」である
という構造の違いを冷静に見極めて、対応することが大切です。
感情的になる必要はありません。反日教育を行っている国家および国民とは、冷淡な対応を静かに継続していけばよいと思います。