人は言う
暮らしていくのは、なかなか難しいと
貧乏のなかにこそ
道の心が横たわっているのを
知っているか
けさ髪が白くなっているのに気付いた
その驚きといったら
夢からはっと目覚めたときのようだ
昔のこと、周の時代の話を少ししよう
黄色い牛を追い立てて
故国周を捨て
ひとり函谷関を抜けたのは
誰であったか
老子先生であった
先生のように函谷関を抜けて旅に出た男は数知れない
彼らは函谷関から先
どこを通ってどこに行ったのか
その道跡は誰も分からない
戻ってくれば
その姿をはっきり見ることができる
でもそれはいつのことやら
彼らはみんな
考えることをあまり好まなかった
そんな昔の行方知れずの男たち
一体どこに行ったのかと思ったら
意外なところで暮らしていた
村や町のあいまで
自由気ままに
口笛を吹いていたのだ
